AGA治療で処方される代表的な内服薬「フィナステリド」。薄毛の進行を抑える作用があるとされ、多くのクリニックでファーストチョイスとして採用されている薬です。しかし、治療を検討している方のなかには、副作用が気になって服用に踏み切れないという方も少なくないでしょう。
結論から言うと、フィナステリドの副作用が報告されている割合は全体の数%程度と、比較的低い水準にとどまっています。ただし、どんな副作用がどの程度の頻度で報告されているのかを事前に知っておくことは、安心して治療を続けるために非常に大切です。
この記事では、フィナステリドの副作用について添付文書のデータや臨床試験の情報をもとに、できるだけ正確にお伝えします。
フィナステリドとは?作用のメカニズム
フィナステリドは、AGA(男性型脱毛症)の原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑える薬です。具体的には、テストステロンをDHTに変換する「5αリダクターゼII型」という酵素の働きを阻害します。
DHTは毛乳頭細胞のアンドロゲン受容体と結合し、ヘアサイクルの成長期を短縮させる要因とされています。フィナステリドでDHTの生成を抑えることによって、乱れたヘアサイクルを正常に近づけることが期待されるというのが基本的な作用メカニズムです。
日本では先発品のプロペシアのほか、複数のジェネリック医薬品が承認・販売されています。日本皮膚科学会のガイドラインでも、AGA治療において推奨度Aの評価を受けている薬です。

フィナステリドの主な副作用と発現頻度
プロペシア(フィナステリド1mg)の添付文書および臨床試験の結果に基づき、報告されている主な副作用をまとめます。
性機能に関する副作用
フィナステリドの副作用として最も広く知られているのが、性機能に関するものです。
- 性欲の減退(リビドー減退):臨床試験では1〜5%未満の頻度で報告
- 勃起機能の低下(ED):1%未満の頻度で報告
- 精液量の減少:1%未満の頻度で報告
国内の臨床試験データでは、48週間の投与で副作用が発現した割合は全体の約1.1%、96週間の投与では約1.6%と報告されています。つまり、大多数の方は副作用を感じることなく服用を続けられているというのが実態です。
肝機能への影響
フィナステリドは肝臓で代謝されるため、まれに肝機能に影響を及ぼす可能性があります。添付文書には「肝機能障害」が副作用として記載されていますが、頻度は「不明」とされています。
もともと肝機能に問題がある方は、治療開始前に医師に必ず申告するようにしてください。また、定期的な血液検査で肝機能の値をチェックしておくことが推奨されています。
その他の報告されている副作用
- 抑うつ症状:頻度不明で報告あり
- 乳房圧痛・乳房肥大:頻度不明で報告あり
- 過敏症(発疹、かゆみ等):頻度不明で報告あり
「頻度不明」とは臨床試験では確認されなかったものの、市販後の自発報告で報告が上がっているものを指します。極めてまれなケースとされていますが、気になる症状があればすぐに医師に相談しましょう。

フィナステリドの副作用に関するよくある誤解
「飲むと必ずEDになる」は誤解
ネット上ではフィナステリドとEDを結びつける情報が多く見られますが、臨床試験でのED発現率は1%未満。プラセボ(偽薬)群でもほぼ同程度のED報告があったことから、フィナステリドが直接EDを引き起こすとは断定できないとする見解もあります。
「副作用が出るかもしれない」という不安感そのものが性機能に影響を及ぼす「ノセボ効果」の可能性も指摘されており、過度に心配しすぎないことも大切です。
「子作りに影響する」について
フィナステリド服用中は精液中にごく微量の成分が移行するとされていますが、男性が服用していても胎児への影響はほぼないとする報告が一般的です。ただし、不安がある方は妊活中の服用について事前に医師に相談することをおすすめします。
なお、フィナステリドの錠剤は女性(特に妊娠中の方)が触れるだけでも経皮吸収のリスクがあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
「やめたら副作用も消える」は概ね正しい
フィナステリドの副作用は、服用を中止することで消失するケースがほとんどです。体内からの排出は比較的速く、服用中止後は速やかにDHTの値も回復するとされています。
ポストフィナステリド症候群(PFS)について
近年、海外を中心に「ポストフィナステリド症候群(PFS)」という概念が話題になることがあります。これはフィナステリドの服用中止後も性機能障害や精神症状が持続するとされる状態です。
ただし、PFSは現時点では医学的に確立された疾患概念ではなく、因果関係も証明されていません。研究は進められているものの、エビデンスとして確立されたものではないという点は押さえておく必要があります。
心配な方は処方前に医師にPFSについて率直に質問し、リスクとメリットを十分に話し合った上で治療を開始するかどうか判断してください。

フィナステリドとデュタステリドの副作用の違い
AGA治療ではフィナステリドと同じカテゴリーの内服薬として、デュタステリド(ザガーロ)も広く使われています。両者の副作用プロファイルを比較しておきましょう。
デュタステリドは5αリダクターゼのI型とII型の両方を阻害するため、フィナステリドよりもDHTの抑制範囲が広いとされています。そのぶん、副作用の発現率もフィナステリドよりやや高い傾向にあるという臨床データがあります。
具体的には、デュタステリドの国内臨床試験における副作用発現率は全体の約16.7%(多くは軽度)と報告されており、フィナステリドの数値より高めです。ただし、実際に重篤な副作用に至るケースは非常に少ないとされています。
どちらの薬が自分に合っているかは、薄毛の進行度や体質を踏まえて医師と相談して決めるのが最善です。
副作用が出た場合の対処法
まずは医師に相談する
副作用と思われる症状が出た場合、自己判断で服用を中止するのではなく、まず処方医に相談しましょう。症状の程度によっては、減量や休薬、他の薬への切り替えなど、適切な対応を検討してもらえます。
薬の切り替えを検討する
フィナステリドで副作用が気になる場合は、デュタステリドへの変更や、ミノキシジル外用薬のみでの治療など、別のアプローチを試すことも選択肢の一つです。
定期的な血液検査を受ける
肝機能への影響を早期に発見するためにも、定期的な血液検査は欠かせません。半年に1回程度の検査を受けることが推奨されています。
まとめ
フィナステリドの副作用は、性欲減退が1〜5%未満、EDが1%未満と、臨床試験データ上では比較的低い頻度で報告されています。大多数の方は副作用なく服用を続けられており、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度Aの評価を得ている治療薬です。
とはいえ、副作用のリスクがゼロではない以上、正しい情報を持った上で医師と相談しながら治療を進めることが何より大切です。過度に怖がる必要はありませんが、身体の変化には常に気を配り、気になることがあればすぐに医師に伝えるようにしましょう。
参考:DMMオンラインクリニック「フィナステリドの副作用」|Dクリニック「プロペシア錠(フィナステリド)」|ナチュラルAGAクリニック「フィナステリドの副作用の確率」

